5月17日、都議会の大先輩でもある萩生田光一文部科学大臣に会派を代表して、取材をしてきました。取材の内容は改めてこちらでも報告いたします。(後日動画も予定しております)

コロナ禍で進んだことの1つに、学校現場のオンライン化があります。実はこの動きはここ数年の話ではなく、古くは昭和〜平成にかけての私が中学生の当時からも実は取り組みとしては進んでいたんですよね。

ただ、PCが並んだ教室があるだけで、ほとんど誰も使わない。一部のPCの好きな友人たちが放課後に部活動の一環で使用していましたが、多くの生徒にとっては何も触れない3年間を過ごしてきたわけです。

この状況は多少は進んだ面もあったかもしれませんが、特段改善することなく、電子黒板が学校に一台だけで誰も使いこなせないなど、もったいない状態が長らく続いてきました。

コロナ禍は早く収束させたいですが、教育現場のオンライン化の進展は、間違いなくこのコロナがトリガーとなったことは否定できません。とはいえ、大きく前進したといってもまだまだ課題は尽きません。そこで、萩生田大臣から大きな方向性や目標を伺うとともに、現場の声を聞いてみようと言うことで、取材をさせていただきました。

少し長いレポートになりますが、ご興味がありましたらご一読ください。今後の教育現場のあり方を考える一助になれば幸甚です。尚、あくまでも一人の当事者の声であり、異なるご意見もあるでしょうし、学校や学級によっての取り組みも異なる面がありますことはご了承ください。

ICT・タブレット端末の活用について~教師の視点から~
 ▶︎様子と状況
~児童~

〇今までにない学習スタイル(すぐに調べることができるツール)なので、楽しそうに活用している。

〇教科書にない知識を得ることができる。

〇タブレットを使えるということで、学習に対して主体的に取り組もうとする姿が見
られる。

〇おもに調べ学習や教師との放課後の伝達手段として使っている。また、学級閉鎖時はオンライン学習としてZoomで授業も行った。児童や保護者からも好評だった。

〇学校のネット環境(WI-FI)も整い始めたことから、教室でも自由に使える。

〇充電は家庭でしてもらっている。

〇伝達手段はロイロノート、調べ学習はサファリやマップ、文章作成はワード、(学級閉鎖時、臨時休校、コロナ感染防止などの長期欠席などの)授業はZoomなど、それぞれの教科や学習内容、アプリの特長に合わせて使い分けて活用している。

〇ネットリテラシーについては、6年生については醸成講座の実施やその他の学年では学習の中で指導している。

~保護者~

〇端末の配布について家庭によって受け止め方はさまざまである。例えば、「臨時休校
等の休みでも本来の学習に遅れることがなくなる。」「放課後、先生とのやりとりがで きて楽しそうである。」「ノートやドリル、プリントなどの課題に取り組むスタイルで はなく、新しい学習スタイルが新鮮で親も子も楽しんでいる。」などの肯定的な意見 もある一方で、「(タブレットを)配るだけ配って家庭任せなのはおかしい。」「受験数 か月前に配られたことで、タブレットばかり触って集中できない。」「ネット環境や家 のルールが家庭によってさまざまなのに、共通の学習を求められても対応できない 家庭はどうすればよいのか。」など、否定的な意見もある。

〇大人より子供の方が抵抗なく使えている。タブレットの配布および活用に対して、保 護者が対応にやや遅れを感じる。「家でのルールはどうしよう。」「どうやって使わせ ようか。」「フィルター制限はどこまで・・・。大丈夫なのか。」など、心配の声もあ る。

〇ICTを活用している先生は「いい先生」、使っていない先生は「ダメな先生」とい う認識をもっている保護者もいるのが現状。
成果と課題

▶︎成果

◎休校中にZoomで行ったオンライン学習は、学校へ行った時とある程度同じように学習を進められるので良かった。

◎学年に複数の教員がいた場合、教科ごとに分担し、学年の児童を一斉に指導できるので「働き方改革」の観点から効率が良い。

◎休校中で不安(児童も保護者も)もあるが、画面を通して友達の顔が見られるのは良い(安心する)。

▶︎課題

△100人以上を相手に授業を進めていくとなると、1時間の授業でストップをかけることができないため、学習習得に課題がある児童に個別に対応することができない。

△学校にZoomのアカウントが限られた数しかないため、全学年が一斉にオンライン学習として授業を行うことが難しい。

△タブレットが重いことで、登下校が大変な子もいる。学校によっては主要科目(国・算・社・理)の教科書とノート、筆記用具と連絡帳、それに加えてタブレットを持たせているところもある。低学年の子には無理がある。

△ノートをとる学習が減ることに不安がある。ノートをとらずにスクショで済ませてしまう。

△学校現場は授業だけでなく、人(友達や教師など)とのかかわりも大切な学びなので、オンライン学習だけでは人づくりは当然難しい。

△一日中タブレットを活用した授業は、身体に悪影響である。
▶︎行政への要望

〇ある程度、共通のネット環境を整備していく必要がある。学校だけでなく、家庭におけるネット環境も整えてほしい。例えばルータの貸し出しを検討してほしい。

〇教職員は、ICT・タブレット端末活用に一定の理解と慣れが必要である。教員の中 にはタブレットを活用する学習スタイルに抵抗を感じている人もいる。教員を対象 とした実践的な研修を行う必要がある。その際、Zoomや出張での研修ではなく、 それぞれの学校を会場とした研修の方が話しやすい(普段から一緒に仕事をしてい る)教員同士の意見交換もあるので効果がある。併せて、教員のスキルアップにもつ
ながる。

〇ICTを担当する教員はいるが、専門的な教員(ICTに特化した)の配置をのぞむ。

〇各教科におけるICTに関する学習指導要領のような指針を示すものがあるといい。例えば「〇年国語では、このアプリを使ってこのような学習ができる。こんな力が身 に付けられる。」など。

▶︎タブレットの活用とあり方

〇児童にさまざまなアプリ(Zoomやロイロノートなど)の使い方や注意点を指導しておく必要がある。

〇タブレットありきの学校生活ではなく、あくまで文房具ツールの一つとして活用していく。なんでもかんでも「便利だから」と活用していくのは、今後タブレットがなくなった時に不便である。必要な時だけ活用するくらいがのぞましい。

〇保護者(家庭)へある程度の理解(説明)を求める必要がある。当然ながら、各家庭 の考え方にバラつきはあるので、それぞれに寄り添い、ニーズに応えていく必要がある。

〇「学校を休んでもオンライン学習ができる。」というわけではない。学校現場としては、いつ休むかわからない状況で、準備をすることは難しい。原則、閉鎖や臨時休校、 不登校気味の児童、コロナ感染防止による長期欠席をした児童のみ活用できるというルールにする必要がある。